【書評】HSPの「正しい知識」が知れる良本(しかも安い)

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岩波ブックレットから出版されている「HSPブームの功罪を問う」という本を読みました。

HSPの良い面・悪い面がわかりやすくまとめられているほか、HSPを狙った詐欺などについても書かれていて、
HSPの正しい知識を知りたい人にピッタリな本だと思いました。

この本を読んで学んだことをまとめていきます!

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HSPの良い面は「安心感」

著者が語るには、このようになっていました。

HSPの良い面

・「生きづらさ」に「HSP」という名前がついて安心できた
・人よりも物事の良いところに気づける
・感動したり、共感することができる

たとえば、体調が悪くて病院に行ったとき、「風邪です」と診断されると安心できますが、
検査したけれどどこも悪くないため病名が付かず、ストレス性のなにかと言われてしまうと、モヤモヤしてしまう。

私はこの経験が多いのですが、HSPと名前が付くことで、「自分だけではない」という安心感が得られます。

最近よく耳にする「グレーゾーン」

最近、ネットを見ていて思うのは「グレーゾーン」という言葉です。
自分は発達障害(ADHDやASDなど)ではないかと心療内科を受診するも、発達障害には当てはまらない。
けれど、限りなくそれに近い状態であることをグレーゾーンと呼びます。

最近SNSなどのプロフィールで見かけるようになりました。
いままでだと発達障害と名乗れず、名前のないモヤモヤを抱えていた人たちが、「グレーゾーン」がつくことで安心できる。
グレーゾーンなので障碍者手帳はもらえないけれど、検索すると自分と同じグレーゾーンの人がたくさんいる。

こういった安心感は、HSPの人たちが思う安心感と似ているなと思いました。

HSPだと自覚することで、良い変化も

うつ病の人と、HSPの人が、ぞれぞれ診断を受けた後に、良い変化が生まれたと書かれています。

うつ病HSP
診断後の変化
(意識面)
・治療への意欲が湧いた
・現状に前向きになれた
・心身の状態を客観視できる
・対処法の自覚ができた
・他の人と「違う」と思っていたことが、意味をなすようになった
・自己を前向きに受容できるようになった
・自身の「ニーズ」に耳を傾けられるようになった
診断後の変化
(行動面)
・生活上の「無理」を避けるようになった
・休養や気分転換、規則正しい生活を心がけるようになった
・仕事が円滑に進むようになった
・このままではいけないと思ったら、その場を離れるようにする
・リラックス状態でいようとする

自分に「うつ病」「HSP」などの名前が付くことで、安心感がうまれ、冷静に自分と向き合い、対処できるようになる。

これは私も経験があって、
うつ状態(適応障害のようなもの)で休職したときに、HSPや適応障害、うつ病のことをものすごく調べたんです。

ことは
ことは

自分を大切にしよう
無理にすべてに向き合う必要はない
疲れたらすぐ寝よう

みたいに、意識を変えて行動も変えていくようにしたら、職場でイライラすることがかなり減りました。

それでも感情が爆発することはあるのですが、そのときはカウンセリングを受けよう、産業医面談を依頼しよう、部長がダメなら人事に相談しようと、対処法を整理できるようにもなったので、自分の弱さ自覚するって大事だなと思いました。

HSPの悪い面は「詐欺被害」や「治療放置」

一方で、悪い面もたくさんあります。

HSPの悪い面

・本来病院に行くべき人が「HSPは病気ではないから」と治療しない
・HSPの治療をうたって、科学的根拠のない高額医療をする
・数日間の講習で「HSPカウンセラー」が名乗れる
・HSPを狙ったカルト、マルチなどの勧誘被害
・繊細で人よりも傷つきやすい

HSPの中には社交不安障害や回避性パーソナリティ障害といった精神疾患が隠れている人もいて、心療内科・精神科で治療をすることで改善する人がいます。(この精神科医の解説がわかりやすいです→こちら

ですが、「HSPって病気じゃないんだ」と病院に行かない理由にしてしまうケースがある。
日々の生活が辛く、支援が必要なのに「いや、でも自分はHSPだから…」と我慢してしまう。
もっと自分を大切にしてほしいなと個人的には思います。

また、SNSをみていて「HSPカウンセラー」を見かけますが、カウンセラーは基本的には国家資格です。
数時間の講座でぺろっととれるものではありません。それくらい人の心は繊細で複雑だからです。
安いから…と誘いに乗ると痛い目に合うので注意を。

HSP=特別と思いすぎると詐欺に合う

学術的なHSPの定義と、日本で浸透したHSPの定義が、少し違っているそうです。
日本では、超繊細で、生きづらいし疲れやすい人が当てはまり、HSPではない人は感受性がない(両極端)。

というように、最初にネガティブな印象を与え、5人に1人しかいないレアな人だという特別感とともに、「人生をポジティブに変える方法を教えますよ」と声をかけてくるのが、詐欺や勧誘の人たちです。

なので、今のHSPの広がり方は、詐欺師達の思うツボということになります。怖い。

精神科の全てが安心とも限らない

どの病院にも先生の良し悪し(相性含め)があるものですが、
精神科によっては悪どい治療をしているところもあるようです。

  • 「HSPは病気」と言ってる病院は怪しい
    HSPは病気ではなく気質だから
  • HSPを脳派で検査・診断する病院は怪しい
    学術的な研究で脳派に関することは行われていないから
  • TMS治療をする病院は怪しい
    うつ病には効くが、それ以外の精神疾患には効果が無い
    日本精神神経学会が注意喚起の声明を出しているほど

TMS治療に関しては、発達障害の人にも行われ注意喚起が出されていたりするようです。

こういう間違った知識でお金儲けをしようとする医師がいると思うと、ぞっとします。

私は以前、ろくに調べず心療内科に行ったところ、カンタンな診断をして「はいあなたうつ病ね」と薬を出されたことがあり、「ここはアカン!」と一心不乱に調べて別の病院に行ったことがあります。
医師の経歴ページはしっかり読んで選びましょう。

多様性の時代だからこそ、お互いを認め合える社会に

HSPの人は、HSPではない人を「思いやりが持てない」と批判し、
HSPではない人は、「HSPを免罪符に自分勝手なことをする」と批判する。

本来、精神疾患の疑いがあるにもかかわらず、病気と認めたくなくてHSPと名乗っている人が、
精神疾患をもつ人を悪く言い、精神疾患の治療を受けている人たちが嫌悪感を抱く。

そんな差別や偏見もたくさんあるのだと、この本を読んで知りました。

LGBTQもそうですが、令和は多様性の時代だと思っているので、
自分と違う人を排除するのではなく、「こういう人もいるんだな」って思い合える社会になったらいいのになと思います。

▼読んだ本はこちら。安いしすぐ読めます

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